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織田信長文書   <

補231
号文書>  天正九年十一月二十七日(1581)
*

近江飯道寺宛朱印状 『徳川家判物并朱黒印』
○内閣文庫所蔵「口絵」
   影印を確認する 国立校文書館所蔵


   当寺領近年
(└)

   令知行分事(└)

   聊以不可有相違(└)

   如有来全令(└)

   進止之、可勤(└)

   寺役之状如件(└)

   天正九(└)

     十一月廿七日   (朱印)(└)

      飯道寺(└) 




    *1  *2
   当寺領 近年
   *3
   知行せしむ分の事

   いささか以て相違あるべからず

   有り来たりの如く全く
   *4
   進止せしめ、
   *5
   寺役を勤むべきの状件の如し

   天正九
                
     十一月廿七日    (朱印

      *6
      飯道寺





  
   現在の寺の領地は、近年(信長が)知行させたものであり

   いささかも相違ない

   これまで通り全て領有してよろしい
   
   その為には寺としての税を勤むべきである

   以上のようにこの書面に示した通りである

   天正九(1581)年

     11月27日    (朱印)

      飯道寺

 


解説

                    
 この文書において「近年」とあるのは、下に注釈を入れたとおり、織田政権がこの寺のある地域(近江)を支配下とし延暦寺焼き討ちをした元亀二年以後を指してるようである。しかし更にもう一歩踏み込んで考えてみると、文書の発給が天正九年であることから察して、十年以上も前の争乱(比叡山焼き討ち)の元亀二年を指すというより、前年(天正八年)に難敵であった本願寺をようやく大阪の地から撤退させた辺りを指している可能性も大いに考えられるように思われる。

 また文末に「可勤寺役之」とあることからも、敵対した宗教勢力には断固とした制裁を加えるものの、大人しく寺役を勤める寺院は保護するという織田政権の基本路線が明確に示されているといえるのではないだろうか。

文責/ 研究員「ら」   
   

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 【脚注】
   
         *
 (* 1) 寺領 / じりょう
   
寺が支配をしている領地や権利。
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 (* 2) 近年 / きんねん
   
ここでいう「近年」とは、織田政権が収公した時点(遅くとも元亀二年の延暦寺焼き討ち)以降を示していると考えられている。しかし発給年から考察するともう少し後かも知れない。
↑解説
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 (* 3) 知行 / ちぎょう
   
中世・近世の所領支配を表す学術用語。もとは職務を執行するという意味で、対象となる所領・諸職の支配を意味した。つまり、封建領主がその所領を実際に統治して年貢・公事等を収納するということであり、領知・領掌と同義語であった。時代によりその権利を認める側が朝廷から幕府、守護へと移り、戦国時代には戦国大名へと変わった。
 後、「知行高」という表現を使用して所領の大小を示す語となり、鎌倉時代の領主は公田面積で、戦国大名は貫高で、江戸時代の大名は石高で、それぞれ知行高を示した。知行高は軍役賦課の基準であり、また大名たちの家格の表現方法でもあったことから、封建社会の身分体系の骨格として重要な位置を占めたが、明治期以降消滅した。
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 (* 4) 進止 / しんし
   
進退ともいう。中世、他を退けて人や土地を支配する権利。特に、所領や所職(しょしき)に対する補任(ぶにん)・宛行(あておこない)・没収などの処分権をいう。
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 (* 5) 寺役 / 
   
寺にかかる役。所領からあがる税であったり、労働奉仕であったりする。
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 (* 6) 飯道寺 / いいみちじ
   
飯道寺は、滋賀県甲賀郡水口町の名山飯道山(六六四メートル)に所在。山岳信仰と深い関係を持っている。
現在は天台宗。飯道神社(飯道権現)の神宮寺(昭和八年三月刊行の『滋賀県史蹟調査報告』第五冊、景山春樹氏「飯道山とその信仰」『歴史手帖』三巻十一号、特集南近江地方参照)。
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  朱印 / しゅいん


この文書で使用されている朱印は第二形。つまり馬蹄形のものである。(↑戻る


 

 <改行位置について>
  
★翻刻文に於いては、国立公文書館の展示(平成12年5月13日〜6月11日「古書・古文書にみる歴史上の人物展」)の際に配布された「展示資料のご紹介」という図録に当文書の影印が収録されており、それにより改行位置が確認できたので『(└)』を文中に挿入し明確な改行位置を示した。 (影印を確認する


   

●参考/増訂 織田信長文書の研究 上巻(吉川弘文館)
新版 角川 日本史辞典    (角川書店) 
広辞苑 第四版        (岩波書店) 
新修名古屋市史第二巻     (名古屋市) 




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