*

織田信長文書   <

378
号文書>  元亀四年七月日(1573)
*

 京都上京宛朱印状 『京都上京文書』1山城、『上京諸文書』内閣文庫所蔵、
『古文書』上立売町外十二町
   影印を確認する 京都国立博物館収蔵

   条々     上京
一、如前々可令還住之事、
一、陣執免除之事、
一、非分課役不可申懸之事、
一、地子銭免除之事 但追而可申出之条、其以前
          何方へも不可能納所事、
一、各宅造畢之間、人足免許之事、
右所差定不可有相違者也、仍下知如件、
  元亀四年七月 日      弾正忠(
朱印

 





   条々     上京
       
*1
一、前々の如く還住せしむべきの事。
   
*2
一、陣執り、免除の事。
 
一、非分の課役を申し懸くべからざるの事。
   
*3
一、地子銭を免除の事。 但し追って申し出すべく候条、それ以前に

            何方へも納所に能わざるの事

一、おのおの宅造おわるの間、人足を免許の事。

右、差し定むところ相違あるべからさるものなり。よって下知、件の如し。

  元亀四年七月 日     弾正忠(朱印





   条々     上京

一、従来の通りに、上京の町々に帰り来たって居住すること。
一、軍隊の陣所として宿所を提供することを免除する。
一、不法な課税や所役を、申し懸けてはいけない。
一、屋敷地の地子銭を免除する。  但し後ほどに申し出すので、それ以前には
                 何方へも納めてはいけない
一、各人が、自分の家を造り直すまで、人足役は免除する。

右のように定めるところは、間違いないところである。
したがって命令することは以上のとおりである。

   元亀四年七月 日      弾正忠(朱印

 


解説

                    

 元亀四年(1573)四月三日〜四日にかけて、織田信長は将軍足利義昭を追放した際、謙遜服従の態度をとった下京とは異なって、傲慢な態度であった上京を焼き討ちにした。(もっともこの事件の背景には、禁裏や幕府御所を控えた上京という地域に対する信長の戦略的な意図が感じられる)。その後、信長はこの朱印状を出して、上京に対して住民の還住を命じたうえで、地子銭を免除するという優遇策をとったのである。これに対して、焼き討ちをしなかった下京に対しては、信長は同じく七月一日付けで下知状を出しているが、それには上京と同様陣取りと非分課役を禁止するものの、地子銭に関しては従前どおり奉行人に収納すべき由を命じている。


文責/ 研究員「ら」   
   

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 【脚注】
   
         *
 (* 1) 環住 / かんじゅう

   
 
織田信長は、元亀四年(1573)四月三日〜四日にかけて上京を焼き討ちをしている。これは、前年の元亀三年暮れに甲斐の武田信玄が西上を開始したことに呼応して、反信長色を明確にし敵対行動をとった将軍足利義昭への明かな威嚇行為である。足利義昭は、反信長勢力として最も期待していた武田信玄が西上を開始すると、信長入京を阻止すべく各地へ働きかけ、一向宗門徒を集めて石山や今堅田に砦を構築させている。しかし、西上行動の途上の武田信玄は、元亀四年四月十二日に遠征中にもかかわらず駒場で死亡してしまう。信玄による信長攻撃にすべてを賭けて挙兵に踏み切ってしまった義昭にとって、後ろ盾の信玄を失ったことは、名ばかりでも存続していた室町幕府に自ら終止符をうつこととなってしまった。
 はじめ二条城に籠もった義昭に対し、岐阜より上洛した信長は京の郊外から幕府御所を控えた上京という地域に対する戦略的な意図から火を放ち焼き払ったのである。そして義昭は、信長が二条を包囲すると無条件降伏するが、すぐに槙島城に籠もり抗戦。結局二歳の幼児を人質にして降伏し京を追放となるのである。

 その後、信長は、戦乱によって避難していた上京の住民達に対してこの朱印状を出して、もと通りに上京に戻り住むことを命じたうえで、地子銭を免除するという優遇策をとったのである。(↑戻る
 

 (* 2) 陣執り / じんとり
   
陣地の陣であり、要は
軍隊の陣所として宿所を提供すること意である。(↑戻る

 (* 3) 地子銭 / じしせん
   
田畑・屋敷・山林などに対して領主が賦課した地代のこと。荘園の制度が発展して荘園領主の得分が年貢と呼ばれるようになると、その年貢分以外の得分を地子といい、米で納める時は「地子米」といい、銭で納めるときは
「地子銭」といった。(↑戻る

  朱印 / しゅいん


この文書で使用されている朱印は第二形。
つまり馬蹄形のものである。
(↑戻る

●参考/新版 角川 日本史辞典    (角川書店) 
広辞苑 第四版        (岩波書店) 
新修名古屋市史第二巻     (名古屋市) 




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